江戸の出版界を舞台に蔦屋重三郎の活躍を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。物語中盤の重要な転換点となる21話から25話では、蔦重の日本橋進出と浅間山の大噴火という歴史的な出来事が描かれます。本記事では、これらの注目エピソードのあらすじを詳しく紹介いたします。
『べらぼう』あらすじ 第21話「蝦夷桜上野屁音」- 政治と出版の交錯点
第21話では、蔦重の出版業における挫折と、田沼親子による蝦夷地政策の始動が同時に描かれます。老舗版元との力の差を見せつけられる蔦重の苦悩が心に残りました。
歌麿との錦絵『雛形若葉』で勝負に出た蔦重でしたが、色味の問題で販売に失敗します。一方でライバルの鶴屋では、政演の青本『御存商売物』が大ヒットを記録し、新参者である蔦重は改めて厳しい現実を突きつけられました。江戸出版界の激しい競争と技術格差が生々しく描かれ、蔦重の悔しさが伝わってきました。
一方、政治の舞台では田沼意次と意知が蝦夷地の上知計画を進めます。三浦庄司の提案により、松前藩から蝦夷地を取り上げて幕府の直轄地とする大胆な構想が始動。背景には松前藩の密貿易「抜荷」があり、意知は花雲助という変名で証拠集めに奔走します。
狂歌の宴で起きた春町の暴発シーンは見ものです。政演の成功への嫉妬から場を荒らした春町でしたが、偶然の屁の音によって場の雰囲気が一変し、笑いに包まれるという展開は、まさに狂歌師らしい”オチ”でした。
『べらぼう』あらすじ 第22話「小生、酒上不埒にて」- 友情と和解の物語
第22話は、前話で筆を折った恋川春町との和解を中心とした人情味あふれる回です。蔦重が春町のもとを訪ね、酒癖の悪さと作品への複雑な思いを抱える彼との関係修復に努める姿が描かれました。
春町の断筆宣言は、政演の『御存商売物』が自身の作品をもとにしていることへの怒りが原因でした。しかし蔦重の粘り強い説得と、仲間たちとの交流を通じて、春町は再び筆を取る決意を固めます。岡山天音さんの熱演が光り、酒に溺れながらも創作への情熱を失わない文人の複雑な心境が伝わってきました。
田沼意知と蔦重の関係も新たな展開を見せています。花雲助として活動する意知との接触は、後の物語展開における重要な伏線となっており、政治と文化が交差する江戸の複雑な人間関係を象徴していました。
『べらぼう』あらすじ 第23話「我こそは江戸一利者なり」- 日本橋への野望
第23話では、蔦重の耕書堂が大きな転機を迎えます。狂歌ブームにより南畝の名が江戸中に知れ渡り、蔦重が手がけた狂歌指南書『浜のきさご』が飛ぶように売れる成功を収めました。
しかし成功に満足することのない蔦重は、さらなる飛躍を求めて日本橋進出を画策します。吉原から日本橋への移転は、単なる事業拡大ではなく、江戸の出版界における地位向上を意味する重要な一歩でした。この決断には、吉原の制約から解放されたいという蔦重の強い意志が込められており、横浜流星さんの演技からもその決意の強さが伝わってきました。
一方で、花魁の誰袖は松前廣年を口説こうとしますが、思うようにいかない展開も描かれます。政治的な駆け引きと個人的な感情が絡み合う複雑な構図は、この作品の魅力の一つといえるでしょう。
『べらぼう』あらすじ 第24話「げにつれなきは日本橋」- ていとの出会いと拒絶
第24話は、蔦重の日本橋進出における最大の障壁となる丸屋の女将・ていとの対峙が描かれます。吉原の親分たちの支援を受けて日本橋出店の準備を進める蔦重でしたが、ていの頑なな拒絶に直面することになりました。
ていが吉原者である蔦重を受け入れない理由は、単純な偏見ではありません。日本橋という江戸商業の中心地における格式と誇りを重んじる彼女の姿勢は、橋本愛さんの凛とした演技によって説得力を持って表現されていました。眼鏡をかけた知的な女性として描かれるていには、大河ドラマらしからぬ独特の魅力を感じました。
蔦重にとってこの拒絶は大きな試練でしたが、同時に彼の人間的成長を促す重要な出来事でもありました。吉原で培った人付き合いの技術だけでは通用しない相手との出会いは、蔦重に新たな学びをもたらすことになります。
『べらぼう』あらすじ 第25話「灰の雨降る日本橋」- 噴火と結婚、新たな門出
シリーズの大きな山場となる第25話では、浅間山の大噴火という歴史的災害と、蔦重の人生における重要な転機が同時に描かれます。
柏原屋の申し出により丸屋を買い取ることに成功した蔦重でしたが、まさにその時に浅間山が大噴火を起こし、江戸の街に大量の灰が降り注ぎます。しかし蔦重はこの災害を「恵みの灰」と捉え、町全体を巻き込んだ灰除去作業をゲーム感覚で行うという発想の転換を見せました。
「遊びじゃねぇから、遊びに変えるんです」という蔦重の言葉は、彼の商人としての本質を表す名言でした。困難な状況でも前向きに捉え周囲を巻き込んで解決に導く彼のリーダーシップは、まさに江戸っ子気質の体現といえるでしょう。
そして何より印象的だったのは、蔦重とていの関係の進展です。掃除を共にする中で生まれた信頼関係、そして蔦重からの結婚申し込みという展開は、視聴者の心を大きく動かしました。ていが語る陶朱公の話は、彼女の教養の深さと蔦重への期待を示す重要なシーンでした。
まとめ – 物語の転換点としての意義
21話から25話は、『べらぼう』全体の中でも特に重要な転換点といえます。蔦重が吉原の版元から江戸を代表する出版人へと成長していく過程が、個人的な挫折と成功、そして歴史的な出来事との交錯の中で描かれています。
特に注目すべきは、各話における人間関係の描写の巧みさです。春町との友情、意知との奇妙な縁、そしてていとの恋愛関係など、それぞれが蔦重の人間的成長に寄与しています。これらの関係性が重層的に描かれることで、単なる成功譚を超えた深みのある物語となっています。
田沼親子の蝦夷地政策や浅間山噴火といった歴史的背景が個人の物語と巧妙に絡み合い、大河ドラマならではのスケール感と人情劇の親しみやすさが両立した構成になっています。
これらのエピソードを通じて、蔦屋重三郎という実在の人物の魅力が現代の視聴者にも伝わってくるのは、脚本・演出・演技の総合力の賜物といえるでしょう。25話で新たなスタートを切った蔦重の今後の活躍に、ますます期待が高まります。
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